金利が上がる…そのときあなたの住宅ローンは?

中小企業診断士

こんにちは!中小企業診断士のketaです。毎日暑い日が続いていますが、一時と比べて朝晩は少し過ごしやすい日が出てきたように感じますね。令和6年7月30日、31日に開催された日銀政策決定会合にて、日銀が政策金利を引き上げてことで、メガバンクをはじめとした金融機関が「短プラ」を引き上げることをHP上などでリリースしています。今回は、短プラが引き上げになることで、多くの家庭が利用している住宅ローンへの影響がどのようなものか考えていきたいと思います。

短期プライムレート=基準金利!

新聞でも既に報じられているように、7月31日の政策金利引き上げと同日、三菱UFJ銀行が令和6年9月2日から短期プライムレートを0.15%引き上げる発表を行いました。これにより他の銀行、信用金庫も同様の動きを見せています。

短期プライムレートって?

短期プライムレートとは、各金融機関で独自に設定している「優良企業向けの1年以内の融資に関する最優遇金利」となっています。実際には競合もあり、もっと低い利率で融資することもありますが、短期プライムレートを基準(基準金利)として、企業の財務内容に応じた信用リスク分、貸出期間に応じた期間リスク分、基本利鞘などを上乗せした金利設計がとられていることが多いです。

住宅ローンのチラシから基準金利を知る

住宅ローンでは、「基準金利から1.5%優遇!金利0.975%!」という表現のチラシもあります。この場合は「0.975+1.5=2.475%」が基準金利(=短期プライムレート)である、となります。

メガバンクをはじめ多くの地銀は短期プライムレートを住宅ローン基準金利としていますが、信用金庫などでは企業向けの融資を短期プライムレート基準、個人向けとなる住宅ローンには「住宅ローンプライムレート」を別に設けているところもあります。金融機関の発想では上記の式のように、「基準金利(2.475%)に対して幅(▲1.5%)がいくらか」ということになります。

今回は金利水準そのものが引き上がる

今回は、金利設計の基盤となっている短期プライムレート自体が引き上げになるため、それに連動する借り入れを行っている人は漏れなく引き上げ対象になっています。契約書にもその旨記載されているため、借りている人が何か手続きをするということはありません。

短期プライムレートの構成、銀行側の意味

住宅ローンは赤字商品!?

短期プライムレートは「資金調達率(預金利子とか銀行間借入のコストとか)」「経費率(店舗運営費、人件費とか)」「基本利鞘(基本的な儲け部分)」の3つを積算した金利で構成されているため、言い換えると「金融機関が適正な収益を上げるのに必要な最低限確保したい利率」ということが言えます。中小企業に例えれば、売上総利益(粗利)に近い感覚です。そういった意味では、住宅ローンは各銀行が体力勝負で低利を実現していたとも言えます。

住宅ローンの金利はいつから変わるの?返済額は?3つの特徴!

皆さんのご心配は、実際にいつからいくら上がるの?というところだと思います。住宅ローンには3つの特徴があります。

住宅ローン3つの特徴

特徴①変動金利型と固定金利型、金利の見直し時期

住宅ローンでは、基準金利が変わると借り手の金利が変わる変動金利型と、基準金利が変わっても借り手の金利は変わらない固定金利型があります。今回影響があるのは、変動金利型で住宅ローンを組んでいる方です。

ここで注目してほしいのが、「変動」という言葉です。似た言葉で「連動」金利型というのがありますが、それぞれ新しい金利が適用になる時期が違います。

「連動金利」と「変動金利」の違い

「連動」では、令和6年9月2日に金利が変わります、と発表された場合、9月2日から新しい金利が適用になる場合です。すぐに適用されるので「連動」という表現です。

「変動」の場合は、9月2日に速やかに新しい金利が適用になりません。あらかじめ金利を見直す時期が決まっているので、「変動」という言葉を使います。住宅ローン契約書では、このような表現が記載されていることが多いです。

住宅ローンは「変動」金利が多い!見直し時期は?

「借入利率の引上げ幅または引下げ幅の算出は、毎年4月1日および10月1日(以下「基準日」といいます。)の年2回行うものとし、各基準日における基準金利とその直前の基準日における基準金利の差をもって借入利率を引上げまたは引下げるものとします。」

ポイントは「年2回」です。この例だと4月1日と10月1日(=基準日)ですので、9月2日に0.15%引き上げる三菱UFJ銀行の場合、9月2日から金利が上がり、支払利息が増えるのではなく、10月1日に「基準金利が上がってますね」ということで「見直し」がかかる、ということです。判定する日っていうことですね。

新しい金利の適用開始日=見直し日ではない

年2回(4,10月)が見直しの時期ということがわかりました。でも、すぐに利息に反映されるわけでもありません。契約書を見てみましょう。

契約書一例

「借入利率を変更する場合、変更後の借入利率の適用開始日は基準日以降最初に到来する6月または12月の約定返済日の翌日とし、適用開始日以降最初に到来する約定返済日から新借入利率適用による返済が始まるものとします。」

契約書独特のわかりにくさですね・・・笑 

契約書の解説

10月1日(基準日)以降最初に到来する12月(令和6年12月)の返済日(例えば20日)の翌日(12月21日)が適用開始日(新しい金利を適用する日)ですよ、という意味です。

住宅ローンは基本的に利息後取なので、令和7年1月20日の返済額の中に、令和6年12月21日〜令和7年1月20日までの利息が含まれます。

今回の例では、令和6年12月21日以降が新しい金利で計算されるということでしたので、令和7年1月20日の返済から、新しい金利で計算された利息を支払っていくことになります。これで契約書通りですね!

まだ8月ですので、住宅ローンを借りている方に営業があるのは、もう少し先の話になります。

特徴②5年見直しルール

ひとまず、すぐに新しい金利が支払いに反映されるものではないことがわかりました。家計の中でも毎月大きな出費となる住宅ローン返済、来年からは物価高に加えて住宅ローン返済額も増えたら大変ですよね。

金融機関では、家計の安定を維持する観点から、5年見直しルールというものがあります。契約書を見てみましょう。

契約書一例

「「毎回の元利金返済額」は、借入利率の毎年10月1日での5回目の見直しを行うまでは、その間に借入利率の変更があっても変更しないものとします。ただし、毎回の元利金返済額の内訳である元金、利息の額は変わります。」

今回はここにもセーフティネットが置かれています。

契約書解説

皆さんが毎月払っている住宅ローンは「元金+利息」の合計で、その合計が毎月一定金額となるようになっていることがほとんどです(元利均等返済)

毎月10万円払っている場合、元金7万円、利息3万円などという内訳になっています。本当は、毎月元金を支払っているのですから、その分利息が減るはずなので、毎月の返済額が減っていくはずです。それなのに毎月10万円という同じ金額なのは、その内訳で「元金部分、利息部分」が行われているためです。

金利が上がっても返済額の「内訳」だけが変わる

5年間(10月1日が5回くるまで)は10万円という返済額は変わりませんが、その内訳だけ変わる、というルールです。これは金利が上がってもの同じです。

金利が上がることで「元金部分、利息部分」となってしまいますが、毎月の支払額は変わりません。「元金部分、利息部分」は上記の例では令和7年1月20日の支払分から適用になります。

5年間の見直し期間が到来したとき、返済額そのものが変更になり、10万円より返済額が増えます。住宅ローンを借りた人によって5年間の見直し時期は異なるので、借入日をご確認ください。

特徴③125%ルール

5年ルールにより返済額そのものが見直しになる方は、0.15%といえど相応に返済額が増えるケースがあります。

金利が急上昇したら返済額が2倍に!?

もし、5年の間に金利がどんどん上昇した場合②の5年ルールがあだとなり、5年後に返済額が2倍になってしまったとしたら、それこそ住宅の維持ができず、手放すことを余儀なくされるという事態が発生しかねません。そこで、この125%ルールが登場します。契約書を見てみましょう。

契約書一例

「毎年10月1日での5回目の見直しにより毎回の元利金返済額に変更がある場合は、新借入利率、残存元金により、残存期間を変えずに再計算するものとします。ただし、新元利金返済額は変更前の元利金返済額の1.25倍を限度とします。その後、更に借入利率の毎年10月1日での見直しを5回行うまでは、その間に借入利率の変更があっても元利金返済額は変更しないものとします。」

契約書解説

まず、「毎年10月1日での5回目の見直しにより毎回の元利金返済額に変更がある場合は、新借入利率、残存元金により、残存期間を変えずに再計算するものとします。」の部分は、5年ルールにより見直しがかかった場合ですね。返済額そのものが変わるもので、その計算方法は「新しい利率」「残高」「残りの借入期間(残り25年なら25年で計算し、5年間適用する=残存期間を変えず)」で計算します、ということです。

ただし、新元利金返済額は変更前の元利金返済額の1.25倍を限度とします」。これが125%ルールです。

新しい利率、残高、残りの期間で新しい返済額を計算しますが、金利がどんどん上がっているからと言って返済額が2倍になることはなく、最大でも1.25倍までですよ、というセーフティネットです。毎月10万円ずつ返済している場合、最大でも12万5千円まで、ということになります。

いくらくらい負担が増えるの?

今回は0.15%の引き上げですので、単純計算で1千万円あたり年間1万5千円、毎月約1千円の負担増になります。この分は来年1月から、返済額の内訳の中で消化され、5年見直しのタイミングで返済額そのものが上がる。ただし125%ルールがあるので、その範囲内で、という理解で大丈夫です。

1千万円あたり年間1万5千円分の元金が従来の予定より減らなくなるということは、その分利息がかかり続けることになります。

よって、返済額見直し時には単純に元金返済部分が年間1万5千円増える、というものではありません。

ここに注意!返済額が増えない=いいことづくめじゃない!

3つの特徴により、なるべく家計への影響を抑える策が講じられています。ただ、金利上昇局面では最終的には決められた期間内で借入金が終わらず、最終回にしわ寄せされてしまうケースもあります。

ゆとりがあるようでしたら、年間1万5千円の部分は繰上げ返済するなどして後々の不安を解消したいですね。その際は繰上げ返済の手続きに関する手数料がかかるかどうか、ネットで手続き可能なのかどうか、来店ならどの店舗まで行かなければならないか(交通費の観点)、も考慮してください

おわりに

住宅ローン利用中の方は契約書をチェック!

今回は日銀の政策金利引き上げによる住宅ローン返済の影響を、3つの特徴を使ってご案内しました。

近年他業種から進出してきた銀行などでは、金利がとても低い代わりに上記の特徴が適用されない契約内容であることもあります

まずはご自身の住宅ローンがどのような契約になっているかを、契約書で確認するか、銀行に問合せしてみてください。その際、いつが5年ルールの見直しになるか、といったことも併せて確認することで、事前に準備することもできると思います。

これから住宅ローンの利用を検討する方、検討中の方へ。

これから住宅ローンの利用を考えている方は、チラシで強調されている目先の金利だけではなく、「3つの特徴があるか」「固定金利で安心感を買うか」といったことも判断材料にしたいですね。

物価高や利上げで出費が増えやすい環境ですが、少しでも先行きを見通すことで不安を解消しましょう!

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