中小企業診断士【一次試験対策】焦らない企業経営論の解き方

中小企業診断士

いよいよ中小企業診断士一次試験まで1カ月を切りました。暗記科目で怒涛の追い込みをする方もいらっしゃると思いますが、試験直前、意外と得点の波が大きい企業経営論についてお話しします。

一見難解な企業経営論の問題が出た場合の対処法

企業経営論は二次筆記試験でも役立つ論点満載の科目です。一次試験においては単に論点の名前を答えさせるものは少なく、分かっていても選択肢で困らせてくる、結果として2択で間違えると得点が大幅に減ってしまう不確実性を持ち合わせています。また、記憶にないような初見問題も出てきて受験生を焦らせる科目でもあります。そして初日の午後、計算系ではないはじめての科目。しっかり解いて運営管理につないで2日目の勢いをつけていきたいところです。

そんなとき、試験本番の緊張感のなかやりがちなのが、①問題文を見て難しそうに感じてしまったことに気を取られ、最後までしっかり読まない。②アの選択肢を読みながらイも視界に入れてしまう。③他の問題も難しいのではと気になってしまう。結果的に時間が迫ってくるのが気になり、普段の実力が出せない。こうなってしまうと、企業経営論だけでなく、次の運営管理や、暗記への疑心暗鬼から2日目の試験にも影響します。

このような結果にならないよう、じっくり日本語を読むことに徹することが、結果的に時間もかからず正解を導くことに繋がります。具体的に令和3年度の問題を用いて見てみましょう

令和3年度第6問で知る『実は科目:国語』

以下、問題と選択肢の抜粋です。

X社は全社的な成長に向けて、新たな業界に参入して、新規事業を展開すること を計画している。参入先の候補として考えられているのは、AからEの 5 つの業界 である。社内で検討したところ、各業界の重要な特性として、次のような報告がプ ロジェクトチームから上がってきた。なお、X社では、いずれの業界においても、 各業界における既存の取引関係を用いるとともに、製品・サービスの質とコストに 関して既存企業と同様の条件で参入することを想定している。
A業界:この業界には、既に 5 社が参入している。主要な原材料は老舗のF社から 5 社に対して安定的に供給されている。A業界の製品は規模が類似した代理店 5 社を通じて販売されている。
B業界:この業界では、 4 社が事業を展開している。G社が主要な原材料に関する
特許を保有しているために、これら 4 社は、原材料をG社から購入する契約を結んでいる。これら 4 社の製品は、H社が全量購入している。 C業界:この業界には、既に 4 社が参入している。主要な原材料は 5 社から購入で きるが、生産工程での安定性を考えると、その 1 社であるK社の原材料が 優れているために、K社の販売数量は他の 4 社の合計よりも多い。C業界 の製品の販売を委託する企業は 5 社存在するが、その中でもL社が強い営業力を有し、他の 4 社を圧倒した市場シェアを獲得しており、ガリバー的な存在である。
D業界:この業界では、 6 社が事業を営んでいる。D業界の製品は技術革新により年々性能が向上しているが、その性能向上は、主要な原料を供給するM社の技術革新を源泉としているために、全量をM社から調達している。D業界の製品は特殊なサポートが必要であることから、そのサポート体制を有
するN社を通じて全量が販売されている。
E業界:この業界には、既に 2 社が参入している。原材料の汎用性は高く、コストと品質で同等の水準となる供給業者が 10 社存在している。顧客は 5 つの業界であり、いずれの業界でも、規模が類似した 10 社以上が事業を展開 している。
以上に記された情報に基づいて、各業界での競争状況、供給業者の交渉力、買い手の交渉力を業界構造として総合的に考えた場合に、X社が参入する業界として、 最も高い収益性(売上高に対する利益率)が期待されるものはどれか。
ア A業界
イ B業界
ウ C業界
エ D業界
オ E業界

以上引用しました。長文で嫌になりますが、よく読めば、競争、売り手と買い手の交渉力の視点から見れば良い、ということが問題文にばっちり書いてあります。では見てみましょう。

A業界→競争5社。交渉力→仕入はみんなF社から安定的。販売先代理店も同規模程度。ということで割とX社にとっては競合他社が多いうえ、仕入交渉先も販売交渉先も少ないため、あまり有利な交渉の余地が無さそうです。 B業界→競争4社とAよりマシですが、仕入、販売共に実質1社しかなく、X社が交渉できる余地は少ないどころか、他の4社と比較されて利益は見込め無さそうです。 C業界→競争はB業界と同程度。仕入、販売共に数がありそうですが、力関係を見ると実質1社に依存する形になりそう。 D業界→競争は最多の6社!自分達の競争が激しく、その上仕入先の技術力と販売先のサポートがないといけないので、X社でどうこうできる業界ではありません。  E業界→最も平和な競争2社。加えて原材料は色々なものに使えるし、供給する企業が10社もあり、供給業社間の競争が激しそう。つまり、買う側のX社達の競争力が相対的に上がると言えます(供給業者側が一生懸命営業をかける感じ)。また、販売先の業界、企業数も合計50以上あるのに、X社のライバルは2社しかいませんから、多少X社が強気に出たとしても販売先は沢山ありますし、販売先からすればX社を入れた3社からしか買えないので、彼らの競争力は相対的に劣ります。

自分の所の競争は少なく、売り手、買い手側内の競争が激しいのを選ぶだけです。いわゆるファイブフォースの類ですが、理論を知らなくても国語的に答えはオとあまり悩まず解けます。この問題は3点で、高い方の得点です。

令和3年度の企業経営論は比較的難易度が下がったと言われますが、こうした一件難しそうな問題もよく読めばラッキー問題であることがわかります。

まとめ

企業経営論は1日目午後初科目、かつ初の計算系ではない科目、初の90分と初ものずくしですが、問題文と選択肢をよく読む、これだけで他の受験生と差をつけられる科目でもあります。長文ほど書かれていることは単純という良い事例を紹介しました。当日はこういう問題こそ心を落ち着かせて、じっくり読み込んでみてください。

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